Ultimate Breaks & Beats – Vol.4 「聖典」をグルーヴで支えた立役者たち

「陰」になりがちな当時のプレイヤーたち

UBBに収録されたネタを楽曲単位で追う中で、「収録曲のビートやグルーヴを生んだプレイヤーについて結構わかってないかも」「例えばJBファミリーあたりは、具体的なプレイヤー名に触れることもあるけど、その他って基本スルーしてきたような…」との思いが過った。「Breakを支えた真の貢献者って、この人たちなんだよな…」と。

 

かくして「この重要Break集をグルーヴで支えたプレイヤー」にフォーカスするべく、UBBに収録された全曲を対象に、各曲のレコーディングに参加していたドラマー及びベーシストのクレジットを確認してみた。この作業では、Discogs様に大変お世話になった。
だが、このDiscogsにおいても、全てのプレイヤー情報が投稿されているわけではないだろうし、そもそも先述した60~70年代におけるJB関連作においては、当時のレコード等にプレイヤーに関するクレジットはほぼ残されていない。これは、この集計結果の網羅性を棄損することになりかねない事実だが、もっとも、後の営みからは、Clyde StubblefieldやJohn “Jabo” Starksといったドラマー、Bootsy CollinsやFred Thomasといったベーシストの名が明らかになっている。本BlogのVol.2及び3で明らかになったJB関連作のUBBにおけるエントリー数からしても、「Break界の神プレイヤーは彼ら」ということで異論はないだろう。

 

■殿堂入り済の「HipHopビートの担い手」プレイヤーたち(Clyde・Jabo・Bootsy)

  

【引用】Discogs(画像押下で当該サイトへ)

 

明らかになった「Hidden Player」 ベスト 5

そんな前提条件もありつつ、筆者による集計の結果「参加クレジットが確認出来たプレイヤー」数は、ドラマーが73名、ベーシストが66名となった。
そして、彼らに関する「参加曲数」をカウントし、出来上がった「UBBエントリー・プレイヤー・ベスト5」が以下の通りだ。
(※左側の数字が「参加曲数」)

 

<ドラマー部門>

  • 4   Harvey Mason (Johnny Hammond・Donald Byrd・Brothers Johnson・Grover Washington Jr.)
  • 3   Bruce Carter (Pleasure3曲)
  • 3   Andrew Smith (Dennis Coffey2曲・ Cecil Holmes)
  • 2   The Movement (Rufus Thomas・Isaac Hayes)
  • 2   Keith Forsey (Jackie Robinson・Gaz)

 

<ベーシスト部門>

  • 3   Bob Babbitt (Dennis Coffey2曲・Cecil Holmes)
  • 3   Nathaniel Phillips (Pleasure3曲)
  • 2   Wilber Biscomb (Roy Ayers・Bo Diddley)
  • 2   Chuck Rainey (Johnny Hammond・Donald Byrd)
  • 2   Gary King (Alphonze Mouzon・Grover Washington Jr.)

 

このベスト5、Vol.2や3で行った「楽曲数単位」での集計結果と異なり、広い意味での「ジャズ畑」からのエントリーで占められた点は興味深い。
ドラマー部門で単独トップとなったHarvey Masonは、自らもリーダー作を発表しているアーティストだが、UBBでは「ジャズ・ファンク」「メロウなフュージョン」「ディスコライクなファンク」まで広くクレジットが確認された。
一方、ベーシスト部門で同数トップとなったBob Babbitは、そのキャリアにモータウンのお歴々やJimi Hendrixといったビッグネームとの共演も確認される男だが、UBBでは「変わり種ジャズ」的な作品でのクレジットで多くエントリーとなった。

また、ここでは突出したポイントを稼ぐ存在が出てこなかった点も、「楽曲数単位」でのカウントにおける傾向との違いだろう。
つまり、「プレイヤー」にフォーカスした風景としては、JBファミリー以外では「どんぐりの背比べ」とも言えるものだ。

 

■UBB収録曲のグルーヴを支えた立役者(若きHarvey Mason)

【引用】Discogs(画像押下で当該サイトへ)

 

「陰の立役者」たちに導かれ…

そんな中、惜しくもベスト10には選出されなかったプレイヤーの顔ぶれを見てみると、フィラデルフィア・ソウルの雄ともいうべきEarl YoungやRon Bakerの名がロック色も強いマイナー作品(Duke Williams)で確認されたり、高校を卒業したばかりと思われるRay Parker Jr.がLamont Dozier作品に参加していたり…といった事実は、筆者にとって新たな発見だったし、判明したプレイヤー名から逆引きし、そのプレイヤーが参加した別の作品を眺めることは、音楽鑑賞の裾野が広がっていく瞬間の連続で、大変楽しい作業であった(そして、この作業を可能としてくれた、Discogsの偉大さも痛感!)。

 

それにしても、これら「隠れた偉人」たちの多いこと!
今回の集計作業において、60~70年代作品では、参加プレイヤーのクレジットが明確になっていたのは半分に満たなかったことも考えると、「発掘されるべき立役者」はまだまだ存在するのかも知れない。

これまで、主にBreakネタとなった楽曲やその抽出部位を入手・確認することでアドレナリンを出してきた筆者だが、HipHopへの「裏(というか、ある意味で真)の貢献者」の存在にも思いを寄せつつ、こんなDiggin’があってもいいかな、と思った秋の夜長であった。

 

■UBBに関する詳細データ(収録曲名等)・収録曲への参加ミュージシャンはこちらで確認

https://www.discogs.com/ja/label/807847-Ultimate-Breaks-Beats?page=1

Discogs – 音楽のデータベースとマーケットプレイス

noblue

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コメント

  • NoBlue より:

    自分の勉強不足という側面は否定しませんが、今回の作業で並んだ名前、ほとんど知らなかったです。
    なのに、その人たちが生むグルーヴはお馴染みのものも多いという…。
    そういった意味で、今回の作業は自分にとって、新しい扉を開いた気が。

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