Mushup!!
- ③日本独自のシーン -
2025年5月6日
ここまでは、マッシュアップというミックス手法を(本ブログ流に)定義付けしつつ、その黎明期に生み出された音源やクラブミュージック・シーンの起爆剤としてスターダムにのし上がった音源を辿ってみましたが、最終回となる今回は、ここ日本のシーンにおけるマッシュアップ動向に焦点を当ててみたいと思います。
主に欧州での活況を呈している感のあるマッシュアップ界隈ですが、ここ日本におけるシーン展開は、欧州のそれとは異なりつつも、なかなかの熱を帯びたものになっている気がします。
「様々な制約がある中で、細かな作業の積み重ねから何かを生み出す」ってこと自体、いかにも日本人は得意であろうことに加え、特にJポップやアニメといった日本独特のシーンは、マッシュアップを生み育てるための土壌となるもの。リスナーからしてみれば、日頃の音楽体験とは異なる面白さを体感するにもってこいの機能を果たしていると言えるでしょう。
まずは、日本におけるマッシュアップの「入口」として位置づけられることの多いこの作品から。
■キングトーンズ“ラストダンスはヘイ・ジュード”(1981)
:Drifters“Save The Last Dance For Me” × Beatles“Hey Jude”
大瀧詠一の手により、ふたつの元曲がまろやかに溶け合う感じはなかなかの気持ちよさだとは思いますが、元曲のメロディを交互に歌ってますからねぇ…まぁ、この場では「マッシュアップの香り漂うメドレー」くらいな位置づけにしておく感じでしょうか。
そして、発表されて四半期が経っている中、「ハマり過ぎてて感動」の声が止まないこちら。
■IKZO“Creep(男ってやつは)”(1999)
:吉幾三“男ってやつは” × Radiohead“Creep”
吉幾三をネタにしたマッシュアップ作を多く残すIKZOですが、この音源については、途中ちょっと泣きそうになる、マッシュアップには珍しいかもしれない「イイ曲」感が強い印象を残します。
ここで「素材縛り」でいくつか。マッシュアップ素材の女王:Perfumeによる、同じ楽曲を使った試みを。
■Unknown“macaroni right now”(2008)
:Beastie Boys“Right Right Now Now” × Perfume“マカロニ”
■KGS“Skirt no suna to Macaroni”(2011?)
:UA“スカートの砂” × Perfume“マカロニ”
KGSというのは「関西ガンジャ世代」の略だそうで、しかもそれは「Tofubeats」のことらしいです…っていうか、素晴らしいミックスだと思います。「イイ曲とイイ曲の掛け合わせだから…」なんてツマラン話ではなく、ミックスされることで更に香りが立っているというか。
Perfumeを素材としたマッシュアップ作品としては、「試しに作ってみた」的な素人さんたちの習作を含めると、ネット上には物凄い数が存在しています。彼女たちも、取り上げられることにアレルギーを示すことはないようで、トラック制作の安価なアプリの登場も相俟って、日本における「マッシュアップ民主化」の中心地的な様相を呈しています。
J-Popを素材にしたマッシュアップ作品は、ネットの世界において続々生まれています。つい最近発見したこちらの完成度もなかなかでした。
■Kashimashup“歌舞伎町のFOOL”(2025)
:羊文学“FOOL” × 椎名林檎“歌舞伎町の女”
大変失礼ながら、筆者はこの方を存じ上げていなかったのですが、ネット上ではかなりの作品が見つかります。この音源は、素材となったそれぞれの楽曲のテイストに通底するものがかなりあるように感じられますね。ただ、それに気付けるか、重ねてみようと思えるか、そこがマッシュアップのクリエイションの核を成すものなんだと思わせる逸品かと。
次に、「アニメとマッシュアップ」という切り口でひとつ。ネットを回遊している中でぶち当たった音源ですが、コレ、なかなかの大仕事ではないかと思います。
■Animash“Beyond The Backlight”(2022)
筆者は、アニメに全く明るくないので、この作品を正しく鑑賞出来ているのか極めて不安なのですが、トラックとして敷かれるインストも、上に乗せる歌唱も、オリジナル曲をぶつ切りにしてサンプルし、めまぐるしいスピードで次々と重ねてます。映像的にも、アニメのオリジナル画像から持ってきてるし…という捉え方で合っているとすれば、凄くないですか? 秋葉原の2 Many DJ’sか?
そして、最後はこの方にご登場いただきます。
■藤原ヒロシ“Butter Going On”(2023?)
:BTS“Butter” × Marvin Gaye“What’s Going On”
■藤原ヒロシ“Shut”(2023?)
:Black Pink“Shutdown” × Afrika Bambaataa“Planet Rock”
自身の活動には、自作自演の音楽家も含まれるHFですが、「日頃のかっちりとした音楽の創作活動とは違うものがやりたかった」「マッシュアップについては、少しくらいピッチやキーが合っていなくても、その不協和音が面白い」といった発言を見かけるあたり、これは彼のDJ気質そのものでもあるような。つまり、曲を繋げている過程で異なる2つの曲が同時になっているアノ瞬間こそが、彼にとってのマッシュアップの旨味なんでしょう。
マッシュアップの面白さに迫る本ブログ企画、最終回となる今回はその「日本における独自のシーン展開」にフォーカスしてみましたが、いかがでしたでしょうか?
また、追加すべきものがありましたら、本稿下にありますコメント欄を使って、情報をください。「みんなで育てるブログ」として、適宜反映させていただきます!
最期までお付き合いいただきありがとうございマッシュアップ!
関連するブログへは、以下からアクセス出来ます。

UniverGoods
コメントする際にはこちらを押下