Mushup!!
- ①黎明期の試み -
2025年4月23日
複数の楽曲を組み合わせ、1曲に仕上げるミックス手法:マッシュアップ。
登場当初は、主に著作権上の問題等から、一部の好き者たちのひっそりとした嗜みであった印象が強いですが、最近では、権利保有者側が「マーケティング戦略上のメリット」を感じ始めてから以降、率先して「使われる」スタンスを取ったり、安価なのに優れたアプリの登場で、トラック制作のための技術的ハードルがかなり下がったりで、「マッシュアップの民主化」が進み、界隈はかなり賑わっている状況です。
そんな中、「マッシュアップ」という名前自体に「バスタード・ポップ」「ブートレグ」といったバリエーションが生まれているだけでなく、その細かな手法や仕上がりにおいても様々な様相を呈しており、筆者のような後追い人にはやや混乱させられる状況にもなっているような。
ということで、本ブログでは、この「マッシュアップ」なるものについて、
・ある音源からは演奏部分を消し、一方の音源からはヴォーカル部分を消した上で、それらを重ね合わせるミックス手法
・コンテンツとしての面白さを高めるため、サウンドのみならず、ヴィジュアルを組み合わせられている。
・演奏のし直しやサンプリングの挿入等により元曲をアレンジし直す「リミックス」、異なる楽曲の一部分を次々に繋げることで1曲に仕上げる「カットアップ」、既存曲のトラック上にオリジナルの歌を乗せた「ブレンド」とは、区別する。
といった形で、定義付けをしておきたいと考えます。
この定義付けですが、それぞれの手法がもたらす「刺激」の種類が違うような気がすることから、個人的な頭の(耳の?)整理的意味合いで行っています。
つまり、「マッシュアップ」「ブレンド」「リミックス」はその着地点が比較的「調和」にあることが多い一方で、「カットアップ」は文字通り「切り刻み感」や「スピード感」に刺激の中心があるような気がしており、この違いはなるべく明確化した方が、この世界をクリアに楽しめそうだ、と考えた次第です(なので、それぞれの手法の優劣を示すものではございませんので、念のため)。
「新しいようで古い」マッシュアップ。まずは、その歴史を紐解く形で触れていきたいと思います。
まずは、「マッシュアップの始まり」的な扱いで登場することの多い、こちらの音源から。
■Buchanan & Goodman“The Flying Saucer”(1956)
のっけからアレですが、この作品の基本的な作りは「重ね」ではなく「繋ぎ」ですよね。ということで、これは「マッシュアップ」ではなく「カットアップ」だと思うんです。ただ、この切り刻み/継ぎ接ぎのスピード感というか、ある種暴力的な振る舞いは、この時代にしてなかなかの刺激ではあるかと。なんてったって、75年前の試みですからね!
時代はいきなり飛びますが、「マッシュアップ」の概念の中では、こちらのオールドスクール・ヒップホップ・クラシックが扱われることも多いような。
■Grandmaster Flash“The Adventures Of Grandmaster Flash On The Wheels Of Steel”(1981)
しかしながら、こちらも基本的に「重ね」部分はなく、「繋ぎ」つまり「カットアップ」ですよね。ただこの作品については、そういうハナシよりも、「ターンテーブル3台使って一発録りした」っていうことの「革命性」に改めて言葉を失います…。
「これ面白くない⁉」という初期衝動に突き動かされた感じがビシビシと伝わってくる、「初期マッシュアップ」の典型例を。
■Club House“Do It Again/Billie Jean”(1983)
:Steely Dan“Do It Again” × Michael Jackson“Billie Jean”
こちら、元曲2曲を弾き直し、歌い直したものであり、その結果として妙にマッチングされた異なるサウンドが「メドレー的アプローチでのカヴァー」に聴こえなくもないのですね。それはそうと、この曲はヨーロッパを中心に結構なヒットとなったようで、イタロ・ディスコ的な位置づけとして聴けば、なるほど色々と合点がいきます。
一方で、音源を合法的に使いつつ、正規リリースされていたマッシュアップ作品を。
■P4F“Propaganda For Frankie”(1986)
:Propaganda“P. Machinery” × Frankie Goes To Hollywood“Relax”
コレ、本当によく出来てます。どちらもTrevor Hornの作品なので、当然なのかもしれないですが、異なる2曲の一体感が凄い!一部弾き直しの痕跡があるものの、トラック上には違う歌が乗っかってるし、映像においてもそれぞれのオリジナルMVからの混ぜ合わせまで行われている、という意味で「近代マッシュアップ」の完成品でもあるかと…ZTT、やることが新し過ぎる!
最期に、元曲のセレクションやその仕上がり含め「クラブ・ミュージックとしてのマッシュアップ」の幕開けを強く感じさせるこちらの音源を。
■JT And The Big Family“Moments In Soul”(1989)
:Soul Ⅱ Soul“Back To Life” × Art Of Noise“Moments In Love”
こちらに関しても、マッシュアップにカテゴライズされることで異論ございません。異なる元曲の重ね合わせとして成り立っているかと。ただ、最近の元曲Aのトラックに、元曲Bの歌、という乗せ方とは少々異なりますね。その意味では「リミックス的マッシュアップ」なのかも。
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マッシュアップの面白さに迫る本ブログ企画、今回はその「歴史の入口」にフォーカスしてみましたが、いかがでしたでしょうか?
どうしても、筆者の心もとない記憶を辿りながらの寄稿になりがちなので、取り扱うべき音源が漏れていることは充分に想定されます。「コレ、取り上げなきゃウソでしょ!」というものがありましたら、本稿下にありますコメント欄を使って、情報をください。「みんなで育てるブログ」として、適宜反映させていただきます!
次回は、1990年代以降、欧米で火が点いたクラブ・ミュージックとしてのマッシュアップ作品にフォーカスしてみたいと思っていますのでお楽しみに!
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