Ultimate Breaks & Beats – Vol.2 収録曲、全部並べてみた。

浮かび上がった「太いビート至上主義」

UBBにおけるシリーズ収録曲は(筆者のカウントでは)全部で178曲。
コンパイラーによる選曲の意図・志向に近づくべく、タテに「リリース年」、ヨコに「ジャンル(その楽曲自体を筆者が私物レコードやYoutubeを駆使して改めて聞いてみて受けた印象・判断なので、一般的な評価とは異なる可能性大いにあり)」を取って、これら収録曲をプロットしてみたのがコチラ。

※情報量の多さから文字が恐ろしく小さくなっているので、PCでは各自拡大の上ご確認を。「Ctrl」と「+」を一緒に押すと拡大出来ます。

 

 

収録曲を「リリース年」で見ると、1966年のJoe Texが一番古く、1984年のFonda Raeが一番新しい曲ということに。
これに「ジャンル」の観点を加えてカウントしてみると、「70年代の作品を中心に、Funkがダントツで一番、Rock・SoulがFunkからは大きく水をあける形でその次に多く選ばれている」という、全くもって誰もが想像する域を出ない結果となった。
しかも、二番手となった「RockやSoul」のほぼ全てが「ファンキーなRock、太いSoul」だったという結果に至っては、この「ジャンル・年代別分析」に大きな意味は無かったのかもと思わざるを得ず……ただ、HipHopなる音楽ジャンルにおいて、これら「太いビート」がその骨格を成していった様の体感には繋がったような。それは「ある時期のドープなHipHopのビートって、ホントにこのコンピが基準になっているんだな」という感慨でもあった。

 

■シリーズのジャケット・デザインはKevin Harrisによるもの

 

【引用】Discogs(画像押下で当該サイトへ)

 

俯瞰から湧き出る興味

一方で、UBBのリリースが行われた5~6年の間には、収録曲の傾向が変化していることも見て取れた。
シリーズ中盤までは、ゴリゴリのドラム・オリエンテッドな楽曲が並ぶものの、それ以降はエレクトロやフュージョン、終盤にはニュー・ウェーヴやメロウなソウルものが若干ながら収められており、この流れは、ヒップホップのトラック・メイキングにおけるトレンドの変遷とも符合するように思える。
また、「米国由来でないアーティスト」がかなり含まれていることは、なんとなく想像してはいたものの、アルバム制作には漕ぎ着けず、7インチシングルのみのリリースとなった楽曲は多いし、現在に至っても「リリース年」すら明確化されていないような、相当マニアックというか、カルトな作品も含まれていることは興味深い。「コレ、親のレコード棚から掘り起こしたんだぜ!」「ヤベェじゃん!なんて曲?」「それは教えられねぇな!」といった会話が聞こえてくるような、Rareなビートを希求したDiggin’なる行為へのある種のロマンも込みで、当時のNYにおけるレコード流通事情にも興味をそそられる。
また、ReggaeやLatinの世界からのエントリーが無いことも気になった。Breakの発明者とされるKool Hercはジャマイカ系だったワケだし、NYは当時からラティーノ・コミュニティだって大きかったハズだが、このコンピへの収録曲としては「(ReggaeやLatinど真ん中ではなく)ラテン・ロックが若干数確認されるのみ」だったことからも、「ビートはファンキーであることが大前提」という強いポリシーを感じざるを得ない。
あとは、当時のHipHopがほぼ収められていないことも、不思議と言えば不思議。生演奏が多かったはずの当時のオールド・スクールなHipHopにだって「良いビート」はあったはずだが、これはDiscoものの収録が極端に少ないこととも共通する何かがあるような気がするが、現時点で筆者の思考は結論に届いていない。

 

このコンピが「新ネタのお披露目の場だったのか」それとも「既に支持を集めていたネタを集めたものなのか」。今回の調査作業を進める中で頭の中にあった疑問である。
実際のところ、どんな視点・プロセスでこのコンピが編まれたのかについては、コンパイラー等による詳細な発言が確認出来ておらず、明らかではない。
しかしながら、このUBBに関しては、「新たなシリーズが発売されると、お祭り騒ぎで2枚購入したぜ!」「トラック・メイキングのために、テスト・プレスの段階でサンプリングしたもんだ」といった有名DJの発言があるわけで、そんなところからは、このUBBが「HipHopを未来へ繋げる牽引役」として機能していたことは確かなようだ。

 

■UBBに関する詳細データ(収録曲名等)はこちらで確認

https://www.discogs.com/ja/label/807847-Ultimate-Breaks-Beats?page=1

 

【出典】

How one essential vinyl collection transformed the sound of music and helped funky beats conquer the world | by Robbie Ettelson | Cuepoint | Medium

 

関連するブログへは、以下からもアクセスいただけます。

Ultimate Breaks & Beats – Vol.1 「HipHop界隈の聖典」が生まれた背景

Ultimate Breaks & Beats – Vol.3 この「聖典」が与えた影響力を実測してみた。

Ultimate Breaks & Beats – Vol.4 「聖典」をグルーヴで支えた立役者たち

Ultimate Breaks & Beats – Vol.5 勝手に「Episode 2」

Ultimate Breaks & Beats – Vol.6 「聖典」には「旧約」があった?

 

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