I’m not a sneak!
 - Beastie Boys × CAMPUS/SUEDE - 

 

●(UniverGoods「中の人」)「音楽とファッションの関わり」という切り口で「ヒップホップとスニーカー」をテーマにお送りするブログ企画の第2弾です。企画を進めるにあたっては、第1弾同様、ゲストの方にご登場いただきます。渋谷・道玄坂でステーキレストラン「英二」を営む程島さんです!お久しぶりです!

□(程島さん)前回からほぼ半年ですか?待ってましたよ~。

 

渋谷は道玄坂のステーキレストラン「英二」の店内。壁には1990年代以降のヒップホップ・クラシックのレコジャケが敷き詰められ、BGMも当時のミックステープが流れる。

 

●暑い日が続いてますが、元気でやってらっしゃいました?

□いや~、もう毎日この暑さじゃないですかぁ。自分が体調崩すは、店の空調壊れるは、結構大変でした…。

●そうなんですね…。では、今日はそんな暑さも吹き飛ばしてくれそうなヘッズを取り上げてくださるようなので、早速本題に行きましょう! 企画の進め方ですが、前回同様、程島さんから「スニーカーを履いたヒップホップ・アーティストのレコジャケ」を持ち込んでいただき、そのスニーカーにまつわるストーリー等についてお話しいただくという形でお願いしています。取り上げたスニーカーについては、somaさんのアーカイブにも助けていただきつつ、可能な限り「現物」を確認していきたいと思っていますので、お楽しみに!

 

 

<Beastie Boys × CAMPUS/SUEDE>

 

□今回の物件は、Beastie Boysです! アド・ロックマイク・DMCAで構成されたNY出身の3人組ですね。

●ご存じの通り、彼らが所属していた当時のDef Jamレーベルでは、Run DMCといったアーティストがヒップホップ黎明期の先陣を切っていたワケで、そんなこともあってか、デビューまもなくのBeastiesは、adidasのSUPERSTARを履いていた記録があります。

 

左のアド・ロックが、「紐無し」で履いているのがSUPERSTARですね。

 

□ただ、彼らって「パンク出身」でしたよね。この頃のヒップホップ・アーティストたちとの間には「出自の違い」はあるんですかね。

●そういうところもあったんでしょうね。実際、彼らは「ジャージやレザーのジャンパーに金の鎖」といった類とは別のスタイルを貫いていて、その中で着用するスニーカーは変遷していきます。

 

真ん中のMCAが履いているのは、STAN SMITHでしょう。

 

左のアド・ロック、そして真ん中のマイク・Dが履いているのが、COUNTRY!?

 

□STAN SMITHに、COUNTRYですか…なんか、全然Beastiesのイメージじゃないなぁ…。

●そうですよね。ただ、この頃の彼らが着用するスニーカーのモデルは、変遷こそしているものの、なんだかんだadidasで一貫しているのは、この時代を表しているんでしょうね。

 

□僕のBeastiesのスニーカーのイメージはコレですね。1992年リリースの「Check Your Head」

 

Rick Rubinの下を離れ、自ら楽器を手にして「演奏」してみせた問題作。“Pass The Mic”がヒットしましたね。

 

●確かに、スニーカーにおける「Beastiesが履いてるヤツ」を世に印象付けたのは、このアルバムのジャケでしょうね。

□ただ、ジャケがモノトーンだし、そもそも向かって右のMCAの足は隠れちゃってますから、モデルの特定が難しいのかも、とは思ったんですが…。

●そうなんですよね。なので、私の方で別の写真を持ってきたんですが、これが「The Skills To Pay The Bills」のジャケ写です。アルバム「Check Your Head」に収録された曲のPVを集めたビデオ集なので、恐らく同じ衣装で撮影されたものと思われます。これなら、3人の足元がバッチリ映ってますよね!

 

これなら、足元バッチリ。ところで、彼らのアー写って「スニーカーを見せる」アングルが多い気がするのは、気のせいでしょうか?

 

□でも、この写真でも…これはCAMPUS?GAZELLE?、こっちはSUEDE?CLYDE?、よくわからんぞって感じですよね…。

●そうですね…今回の物件はややこしいブツかもしれません。いわゆるadidasにおける「CAMPUSなのか、GAZELLEなのか、わかりにくい問題」ですね。まず、私の見解から申し上げると、向かって左のマイク・Dが着用しているのがネイビー×ホワイトのCAMPUS、右のMCAが着用しているのがグレー×ホワイトのCAMPUSではないかと思っています。

 

CAMPUSのネイビー×ホワイト。こちらは、ソールのステッチが前方半分のみのため、1980年代中期のモデルと思われます。

 

CAMPUSのグレー×ホワイト。こちらは、ソールのステッチが全体にわたっているため、1980年代前半のモデルと思われます。

 

●細かな仕様の違いが確認出来ない以上、このジャケ写だけでBeastiesのふたりが履いているモデルを特定するのは、なかなか難しいところです…ただ、決め手はカラバリということになるかと。これらは、恐らく1980年代前半~中期のCAMPUSです。このカラーリングの展開はこの頃のみだと思われますので。

□なるほど。ところで、「中の人」さん的に、Beastiesはどんな存在ですか?

●実は、このBeastie Boys、私的には非常に「世代」でございまして!作品としては「Paul’s Boutique」なんですが、この「Check Your Head」のレコジャケを見てからは、CAMPUSいいなぁ~って思いを募らせていたんです。そうしたところ、少し前にsomaさんに入荷したもんで、即購入させていただきました!

□カラーリングは、どちらを?

●グレー×ホワイトです。青みを帯びた当時の紐も残ってて、ひとめぼれでした…。ただ、この企画に着手した頃から、ネイビー×ホワイトも欲しくなっちゃって…。

 

 

●そしてもうひとつは、このブログ企画では初登場となるPUMAのモデルになりますが…今度は「SUEDEなのかCLYDEなのか」問題にぶつかりましたねぇ…こちらも、私見にはなりますが、写真中央のアドロックが着用しているのは、1980年代中期のSUEDEのナチュラル(生成り)×グリーンになるかなぁと。

(当該モデルの画像については、確認出来次第、アップします!)

 

●また、「Check Your Head」と同時期と思われる、ステージ上のBeastiesの写真も見つけました。

 

「Check Your Head」の頃のステージ上のBeasties。向かって左のMCAの足元に注目!

 

□MCAが、グリーンとレッドを片足ずつ履いてる!

●そうなんですよね、これは「Beastiesならでは」とでもいうべき、かなり斬新な履き方ですが(笑)、このグリーンとレッドのカラバリも、上記グレー×グリーンのSUEDEと同時期に展開されているので、CLYDEではなくSUEDEということでいいのかなと。

 

1980年代中期のCAMPUS。レッド×ホワイトですね。

 

 

こちらはグリーン×ホワイト。この頃のSUEDEはユーゴスラヴィアで作られていたようです。

 

 

●ところで、このPUMAのSUEDEですが、本来は「SUEDE」なんてモデル名は無かったという話は知ってます?

□え、そうなんですか? 聞いたこと無いです…。

●このシューズを語るにあたっては、大事な逸話があるんですが、この話はまた別途ということにしましょう。

 

 

●さて、このadidasのCAMPUSとPUMAのSUEDEですが、今回登場してもらったBeastie Boysの時代よりも少し前、つまり1980年代に入ってすぐには、既にNYのストリートではかなりの人気だったみたいなんです。つまり、NYの人々は、CAMPUSやSUEDEが世に出始めてすぐに、これらトレーニング・シューズだったはずのアイテムを、自らのファッションの中に取り込んでいた、ということになります。この写真集を見てください。

 

2001年に出された写真集「BACK IN THE DAYS」。1980年代のNYのストリートの様子が克明に記録されている。

 

□この写真集、出てくるスニーカーも面白いですが、ファッション全体が凄いっすねぇ。必ずしも高価なものを身に着けずとも「あるモノで楽しんじゃおう」感みたいなものがビンビン伝わってきて、見てて飽きないっす。

 

3人のうち2人が、CAMPUSを履いてます。

 

 

向かって右の彼は、MCAも履いてた、SUEDEの生成り×緑を着用。紫の紐が太くてドープ!

 

 

こちらは、レッドとグリーンのSUEDEで仲良くキメてくれてます。

 

●この写真集は、1980年代のNYを切り取ったものですが、Beastiesのメンバーが「Check Your Head」のジャケで履いていたモデルも出てくるワケです。これを見てて感じたのは、「Beastiesは、その音楽同様、ファッションにおいても、過去を参照しながら、それを絶妙なタイミングとアングルで見せてくる達人だな」ということです。

 

 

 

●一方で、Beastiesの「Check Your Head」の少し後、つまり1990年代~2000年代にかけては、今回取り上げていただいたCAMPUSとSUEDEの両方が「スケート・カルチャーとの強い繋がり」を見せていますよね。

□僕はこの頃、BMXにハマってたんですが、BMXのシーンって、特にファッション的にはスケートとの繋がりが強くて、そういった意味ではスケート・シーンにも結構浸かってましたねぇ。着ていたのはPOWELLあたりが中心でしたが、スニーカーには確かにSUEDE/CLYDEも含まれてました。Beastiesの「Check Your Head」も後追いで、スケーターのビデオを観てると結構Beastiesの曲が使われてたんで、それでこのアルバムにも辿り着いたって感じです。そういえば、X-LARGEが、ストアのオープン時にこのCAMPUSとCLYDEのデッドストックを大量に売り出した、なんてハナシを聞いたことを思い出しました!

●仰る通り彼らの曲がプロスケーターのビデオで使われたり、またメンバー自身がスケーターでもあったワケで、Beastiesとスケート・シーンの間には深い関わりがあったようですね。こういった関係性は「ヒップホップのみならず、スニーカー文化のストリート性を立体的にした」とも言えそうですよね。

 

 

□近年のadidasのCAMPUSは、BAPEやX-Largeといったヒップホップとの所縁も深いブランドとコラボしていましたね。PUMAのSUEDEも、X-Largeのみならず、Rock Steady Crewのメンバー:ボビートという、なかなかにマニアックな人とのコラボをしていたことを覚えてます。

 

ヒップホップ黎明期となる1980年代から、2000年代に入ってからのスケート・シーンに至るまで、そこに登場する人々の足元には、ずっとこのふたつのモデルがあって、しかもそれらを繋ぐ媒介役としてBeastie Boysが存在していた、という事実は、ここ半世紀にわたるユース・カルチャーを捉える上でも、覚えておいて損はないポイントとなる気もします。そんなCAMPUSとSUEDEについては、別のブログ企画でも深掘りしたいと思っていますので、お楽しみに!

 

 

 

<画像を押下すると、そのアイテムに関する投稿ページが閲覧出来ます>

 

 

 

「ヒップホップとスニーカー」に関するブログ企画、いかがだったでしょうか? ヒップホップとスニーカーが関わるストーリーは、まだまだ続きますので、お楽しみに!

また、本企画は「UniverClothes」と「UniverTunes」の「部屋またがり」企画にもなっています。これを機会に、ファッションと音楽それぞれの「沼」へと続く扉を開けてみていただければと思っています!

 

UniverGoods

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